track 14……冬の花火



 夢。

 …夢を見ていた。

 幸せな夢。
 過去の夢。

 真琴がいた頃の夢だ。

 胸を切なく締めつけるのは、その後に訪れる別れを、いまの俺が知っているからだろうか。

 …真琴。

 秋子さんの娘であり、名雪の妹であり。
 そして俺にとって、大切で愛おしい…真琴。

 深々と降り積もる雪のように。
 真琴への想いが積み重なっていく。

 そしてそれは雪のように。
 淡く溶け、薄れていこうとする。

 真琴への想いが。
 記憶が。

 真琴のことが思い出となって…。

 そして。

 やがて、かえりみることのない過去の出来事としてしまうのが、たまらなく嫌だった。

 薄れていくのを抗うように。
 想いを掻き集め、必死につなぎ止めようと足掻く。

 …奇跡というものがあるのなら。

 いや、奇跡は起きた。
 真琴が、人の姿で俺の前に現れたこと自体が奇跡だったんだ。

 それなら。

 もう一度、真琴が戻ってくるような。
 そんな奇跡が起きたって、別にだれも文句を言いやしないよ。

 戻って来いよ。
 俺たちの所に、戻って来いよ。

 なあ、真琴。

 早く戻って来いよ…。


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