忘れえぬ曲 |
『Ultima Online』をはじめて……。
とうとう、一年が経ってしまった。
長いようで、短いようで。
充実した時間が、流れていった。
「たかがゲームに」
などと呆れた顔をする人も居るかも知れないけれど。
『UO』は、私にとって、かけがえのないモノだ……。
いままでも。
そして、これからも。
やがては、『UO』を辞めるときも来ると思う。
それでも、『UO』は忘れられないだろう。
忘れられない記憶……。
折りにふれ、『UO』を思い出すに違いない。
あの、耳に残る音楽とともに、私の大切な思い出となる。
Bajaがサーバーダウンし、そのアップを待って、今はもう、UOを辞めた仲間たちと IRCで会話を楽しんだり。
その仲間の情報で、Bajaアップ。
UOを起動。
深夜に流れる、UOオープニングの曲(stones2)。
「KAORU」が目覚めるのは、馴染みのブリテイン、スウィートドリームスという宿。
聞き慣れたブリテインのテーマ曲を耳にしつつ、今日はなにをしようかな?
だなんて、胸を高鳴らせたあの日……。
ブリテインから離れ、東へと冒険。
街から離れると、寂しげな音楽に。
Hideを得られる動物を屠り。
モンスターを倒し。
PKから逃げ回り。
やがて、沼地へと到達する。
初めて、あの沼地周辺での曲を耳にしたときは、未知への恐怖と好奇心で、鳥肌立ったものだ……。
初めて訪れたダンジョンは、ディスパイス。
行ったこともないという人も居るし、行く価値もない……という冒険者も多いが。
私にとってディスパイスは、UOの中で、三本の指に入るほど、好きなダンジョン。
戦闘技術を得、Hideを得、スクロールを得、宝箱から金銭を得、Tamingを磨き、毒の治療でヒーリングを磨く。
初めて訪れた時、不安を煽るような音楽とともに、画面が真っ暗になる。
そのときは魔法など使えず、ナイトサイトの存在さえしらなかった。
モニターの輝度を上げ、苦労しながら、ふたりの仲間とダンジョンを進む。
魔法使いの仲間は、「儲からない」と不平満々。
さらに、仲間をミスアタックしてしまい、称号を落としてしまったんだっけ。
灰色NAMEの烙印を押され、その後、結構苦労してたんだよね。
初めて、長い長い旅をしたことを、いまでもハッキリと覚えている。
ブリテインから、徒歩で東進。
動物やモンスターを蹴散らしつつ、進んでいく。
やがて沼地を越え、さらに進み、小さな街、コーブに辿り着く。
コーブは、ホント小さな街で……。
その南に、オークキャンプがあるものの、もぬけの殻。
ほどなくして、再び、旅を再開。
森の中で、オークロードと遭遇。
まだ拙かった弓の技術で、10分近く戦ったと記憶している。
苦労して倒し……。
オークロードの財宝を見てみると、そこには、100gp以上と、リングメイルと、宝石。
そして、魔法の掛かった盾が入っていたんだよね。
……嬉しかった。
モンスターを倒して、これだけの財宝が手に入るんだって……初めて知った出来事だ。
森をしばらく歩くと……そこはヴェスパー。
透明な感じの綺麗な音楽を聴きつつ、ヴェスパーを散策。
後に、この街の革屋で、大儲けするんだっけかなー。
私に、皮裁縫の極意を教えてくれたあの人は、いまもUOを続けているだろうか……。
ヴェスパーを去り、北西へ。
そこは、ミノック。
鍛冶屋、炭坑夫たちの聖地。
ここで旅を終了し。
近くにあるムーンゲートを使い、ブリテインへと帰還する。
この時が、初めてムーンゲートをつかったんだ……。
ブリテインの曲が、妙に懐かしかった。
そして、モンスターヴァレー。
オークヴァレー、ラットマンヴァレー、デスヴァレーなどと言う人も居て。
正式な名前は、無いのだけれど。
当時は、非常に多くの冒険者が訪れたモノだ。
”山”と名づけられた曲が流れる、一体。
あの、澄んだ音楽が緊張感をあおり、訪れるたび、キュッと気をひきしめたものだ……。
二つの宝箱と、かがり火とともに現れる、四体のオーク、ラットマン。
それらモンスターキャンプが、頻繁に出現し。
谷の中を、宝箱とかがり火で埋め尽くされたものだった。
そこで、ヤツと出会う。
谷に悪名を轟かせていた、Thief PK……。
幾度となく、ヤツと戦う。
一度、私が敗北した以外は。
私が撃退し、あるいは逃亡。
あのThiefとの戦いが、私に対人戦の緊張感、面白さを教えてくれ。
そして、UOの楽しさに火をつけてくれたんだった。
いまでも思い出す。
夜に陰る谷の中、かがり火を背にした、ヤツの姿を……。
あのThiefとの戦い。
いま思い返せば、なんとも拙い戦い方だった。
勝負がつかず、延々、20分以上戦っていたこともあった。
どうやれば倒せるかとか。
少ない知識を総動員して、考えながら戦ったものだ。
しかし、すでにあの谷は、無くなっていた。
クリーチャーのspawnに修正が加わり。
あの谷には、滅多にモンスターキャンプが出現しなくなった。
そしてまた、相次ぐパッチで。
Thief PKが困難になり、ついで全滅した。
……もう、あの日は、二度と訪れることはないのだ……。
幻の都、ウィンド。
使い切れぬほどの金銭を、私にもたらしてくれた、白亜の都……。
はじめて訪れた時、あの寂しげで退廃的な音楽に、胸を打たれた。
……巨体モンスター・ドレイクを最初に倒したのも、ここだった。
そして、大切にしていた愛馬の死。
愛馬のHideで作ったブーツは、いまも「KAORU」の貸金庫の中にある。
はじめて建てた、小さな家。
ログインする旅に、あの寂しげな音楽が静かに流れていた……。
なぜか、一番長く住んでいたような記憶がある。
Asukaでは、多くの家を持つようになったからだろう。
模様替えを楽しみ。
何度もの、アイテムのバグ消失を嘆いたものだ……。
あの家も、いまは無い。
証書に戻り、「KAORU」の鞄の中に、大切にしまわれている。
あそこには、きっと、別の小さな家が建てられていることだろう……。
……もう、あそこには戻れない。
Bajaに、私が帰るべきところは、無い。
Asukaで暮らした時間のほうが長いせいもあるだろうけど。
BajaでのUO生活は、すでに思い出となり……過去のものとなっている。
いつかは、いまのAsukaでの生活も、戻れない、過去のものへとなっていくのだろう。
Baja……そして、Asuka初期。
当時、ともにUOを楽しんできた仲間たちも、ほとんどがUOから去っていった。
深夜。
Bajaのサーバーアップを待ちつつ、IRCで会話をし。
そして流れた、Stones2の音楽は、もう、鳴り響くことはないのだ。
UOを起動した時に流れる、Stones2という名の曲。
戻れない過去を懐かしみ、惜しむかのように、私の心に響いていく。
まれに、その曲に胸をしめつけられ、涙ぐむのは、私の涙腺が弱いせいか……。
ただ、はっきりと予想できる。
いつかきっと、あの音楽を聴くことで、過去を懐かしみ、涙ぐむ自分を。
◇