「ちっがぁーーうっ!!
 あんたは恵泉女学院、今年度のエルダー・シスター!
 泣く子も頬を染めて見惚れるという、憧れとか尊敬とか崇拝とか
その他もろもろを一身に集めるただひとり選ばれた女生徒。
 まさに我らのクイーン・オブ・クイーンズ。
 恵泉女学院に知らぬ者はない『お・ね・え・さ・ま』なのよーーっ……!!」

――御門まりや
「……嘘だ……嘘ですよね、紫苑さん……?」

 振り返っておはよう、と云って欲しかった。
 ここに居たのは偶然で、ただ涼みにやってきただけだと、そう口にして欲しかった。
 またあの微笑みを僕に向けて、優しい声音を聞かせて欲しかった。

――十条紫苑

この作品は、キャラメルBOXの『処女はお姉さまに恋してる(おとめはボクに恋してる)』の二次創作小説です。
ネットでは『おとボク』『おボクさま』などの愛称で知られ、一部で熱狂的な支持を得つつも、いまだマイナーな作品です。

伝統的なお嬢さま学校に、美少女と見紛うほどの男の子がその正体を隠し、女装して通うというコメディータッチな作品です。
ソフト百合的な空気が爽やかに流れる学院。
そこに編入してきた主人公の瑞穂(男)を中心に、ほんわか風味で描かれる学園物語。


すでにクリア済みの方はもちろん、まだ『おとボク』を知らない人でも楽しめるように描いてみました。
楽しかった時間をくれたこの作品に、敬意を表して。
また、この二次創作小説を読んで、本編である『おとボク』にひとりでも多くの方が興味を持ってくれることを願って。


……瑞穂がエルダー・シスターに選ばれて間もない頃。
『おとボク』本編に置ける、二話の前半あたりに盗難事件が起こったという設定で描かれています。

瑞穂をメインに、まりや、紫苑、貴子を脇役に描かれる物語……。
何が盗まれ、誰が盗んだのか?


※この二次創作小説は、『おとボク』本編を参考に描かれています
 初回特典などに掲載されたショートシナリオ、『やるきばこ』などは参考にしていません

 また、♪マークの所は、『おとボク』本編のおまけモードで聴くことが出来る「音楽鑑賞」の曲に対応しています


『七月の間奏曲』

 差し込む日の光が背中に当たって、後光が差すような感じに輪郭が輝く。
 貴子さんの髪の色は少し薄いので、光を帯びると綺麗な飴色になった。

「……わたくし、エルダーになりたかった」
 ポツリとこぼれたその言葉は、あまりにも純粋に紡がれていた。
 純粋な欲求。
 その貴子さんの望みを、突然現れた僕が奪い去ったことに思い至り、胸が切なくうずく。

――厳島貴子
僕の周りにいる人たちが、とてもとても大好きで。
僕の望みは、大好きな人たちみんなの幸せ。
異分子である僕は対象外でもかまいません。
ですからマリア様……どうか……恵泉のみんなに祝福を……。

背後で、運命の扉が開くのが聞こえた。
 祈りを止め、静かに立ち上がって振り返る。
 ……礼拝堂の入り口に、彼女が立っていた。

――宮小路瑞穂




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