第3話 08/03
(1)図書館
「どうや、居候?」
「ダメだ。 全然ないなぁ」
俺(往人)は晴子と、図書館にて調べものをしていた。
この街でいろいろ聞いていくうちに、興味深い話を耳にしたのだ。
なんと、この街のあるところで平安時代、羽を持つ少女が天に昇っていったという、
『翼人伝説』があるというのだ。
もしそうなら、ここに羽の生えた少女を…そして、その記憶を継ぐ者である
あの少年…悠を、そして大切な娘、観雪を助ける手がかりがあるかもしれない…
そう思ったのだが、そんなに現実は甘くないようだ。
「伝説があるんなら、ここにその文献が残っていてもおかしくないと思ったんだがなぁ…」
「何か言ってる暇があったら、先に手を動かしぃや。
間に合わなかったら、ただじゃすまさへんで」
「あぁ、わかってる。 今度こそ必ず、二人を死なせたりはしない。
あんな想いをするのは、もうたくさんだ…」
俺がそう言うと、晴子がふともらした。
「それは…うちも同じや」
「ん?」
「観鈴が死んだときのこと、今も覚えてる。
あの子はうちの腕の中に倒れこんで、この世の幸せを全て経験したような
幸せそうな笑顔を浮かべて、死んでいったんや。
あんな笑顔を…あんな悲しそうな笑顔を見るのは、観鈴だけでたくさんや…」
(2)街の見える丘
観雪ちんと悠くんは、街の外れにある丘にやってきたの。
悠くんの話では、ここからは街が一望できるんだって。
「ここ、僕が一番好きなところなんだ」
「へぇ…」
そう言う悠くんの瞳は町の中にいるときよりもきらきらしてた。
「夜なんかは、街の灯りが宝石みたいにきれいなんだよ」
「そうなんだ…観雪ちんも見てみたいなぁ…。
あれ? でも、夜遅くまでいていいの?」
「うん。 施設の人たちは優しいから、少しぐらい遅くなっても怒ったりしないから」
「施設?」
「うん。 僕のお父さんとお母さんは、僕が幼稚園に入った頃に、僕をこの街の施設に預けたんだ…」
「あ…!」
「お父さんとお母さんにとって、僕は望まれない子供だったんだって…」
あ…や、やだ…知らないうちに目から涙が…
「ぐすっ…ご、ごめんね。 悠くん…。 そんな思い出したくないようなこと聞いて…ひっく…」
「い、いや、いいんだよ。 もう過ぎたことだから…。 ね、泣かないで…」
そう言って、悠くんは私にハンカチを差し出したの。
私はそのハンカチを受け取って、涙をふいたよ。
「それに、施設の人たち、みんな僕にあったかくて優しくしてくれるから」
「そうなんだ…」
「あ、観雪ちゃん。 一番星が出たよ」
「え? あ、本当だ」
悠くんが指差した先を見上げると、確かにそこには一番星が。
まるで、観鈴お母さんが私たちに微笑みかけているよう…
「…っ」
と、そこに私の背中に軽い痛みが走って、私はかすかに表情をゆがめちゃったみたい。
すると、悠くんはちょっと心配そうな表情を浮かべたの。
「大丈夫、観雪ちゃん? どうしたの?」
「う、うぅん。 なんでもないよ」
私は悠くんにそう微笑んで、一緒にどんどんとあらわれてくる星空を見上げたの…
To Be Continued...
◇