「ええ〜〜っ、私たちも男装するんですかっ!?」
 新生徒会では副会長となる、現会計の菅原君枝は悲鳴じみた声をあげた。

 恵泉ミス・ミスターコンテスト……通称「男装コンテスト」当日──。
 準備のため朝早くに登校した君枝を待っていたのは、黒い詰め襟の男子用学生服……いわゆる学ランだった。

「正しくは男装じゃあなくって。余ったLLの上着をいまの学生服の上に羽織るって感じ。あとは学帽があるんで、それを頭にかぶれば運営委員の証になるってわけ」
 そう云って、新生徒会では会長となる門倉葉子は、黒い学帽をかぶって見せた。

 コンテスト出場者は上下ともに学ランとなるので、上着を羽織るだけの新生徒会メンバーの格好とは明らかに違う。
 黒い学帽は数が少ないらしく、自分たちのみ頭にかぶるので運営委員の良い目印となるだろう、ということだった。

「うう〜ん、葉子さんは似合うからいいだろうけど……」

 葉子は大きめの黒い学ランを羽織っているが、ボタンを掛けていない真ん中からは恵泉の赤いリボンがのぞいて見え、学ランの裾からは恵泉の黒いスカートが伸びている。
 スタイルが良く元々髪の短い葉子は、学帽をかぶるとなにやら美青年めいていて倒錯的な魅力を醸し出している。

「葉子さん、コンテストに出場したら良い線いってたかも〜?」
 そう云って朗らかに笑うのは、現書記の烏橘可奈子。
 おそらく、来年度も書記のみに専念することになるであろう。
 その可奈子もすでに学ランを纏っているのだが、こちらは葉子と違い、いかにも女の子が男装している、といった様子で可愛らしい見た目だった。
 華奢な身体に大きめな学ランは、まるでハーフコートを着ているように見える。

「君枝さんも、お下げを帽子の中にいれちゃえばいいから。ね?」
 葉子に学ランと学帽を押しつけられ、君枝はしぶしぶ受け取った。

「あ、でも〜。君枝さん、この際お下げを解いて背中に流すのもいいかも〜?」
 可奈子はニコニコ笑いつつ、君枝のお下げにそっと手をふれる。

 身近な人に髪の毛を触られることなんてほとんど無かったことなので、君枝はちょっと顔を赤くする。
「……この引っ詰め髪は、ちょっとわけありなんで」
 まるで守るようにお下げに手を当て、君枝は後ずさった。

『あのお下げ髪の可愛らしい下級生が──』

「お疲れ様です、皆さん」
 そんな所に、現生徒会長である厳島貴子が準備中である此処、体育館に入ってきた。
「「ご苦労様です、会長」」

 ……厳密的に云うなら、貴子はすでに生徒会長ではない。
 三月中旬現在、実際に生徒会業務を取り仕切っているのは新生徒会の面々だった。
 貴子の任期はすでに三月の時点で終わっているのだけれど、恵泉の通例で、現生徒会長が卒業するまでは新生徒会の面々が新しい役職で呼ばれることは無い。
 現生徒会長である貴子は「会長」と呼ばれるまま、この恵泉を卒業し、巣立っていくことになる……。

「あら、葉子さん。やっぱりあなた似合うわね、男装」
「ありがとうございます」
 葉子は照れることなく、微笑みながら賛辞を受け止めた。
「……なるほど。男装コンテストを受け入れたのは、そういう理由もあったわけね」
「あはは、わかっちゃいました?」
 葉子は、男装に自信があったのだろう。

 とはいえ、実際にコンテストの運営にかかわるなら出場は出来ない。
 だからこそ、運営委員は目立つ必要があるという理由を作って、新生徒会のメンバーに男装させ、自分も着替えてその魅力をアピールしたかったのだ。
 この男装コンテストの実施は新生徒会のイメージアップと云っていたが、来年度の生徒会長である葉子のイメージアップも狙いだったに違いない。

「会長〜。君枝さんの場合、お下げ髪を解いて背中に流したり、緩く縛ったりした方が可愛らしいと思うんですけど、どう思います〜?」
 可奈子は先ほどのことをまだ気にしていたのか、そんなことを無邪気に云った。

「そうねぇ……」
 貴子の視線が自分の顔に向けられるのを感じて、君枝は頬が火照る。

「男装といっても、男性になりきる必要なんて無いと私は思うの。男装を美しく着こなすだけなら、むしろ女性らしい長い髪をしているのもアンバランスで良いと思うわ」
 貴子のほっそりとした白い手が、君枝のお下げをつかみ取る。
 可奈子にさわられたときとは比べようもない衝撃が、君枝を襲う。
 それはもう逃げるどころではなく、金縛りのように君枝を捕らえて、離さない。

『……君枝さんは、貴子さん一筋なのですね』
 まだそれほど会話もしたことがなかった宮小路瑞穂からあっさりと見抜かれるほど、君枝の瞳は貴子に向けられいてた。
 それは本人と、視線を向けられる当人以外には丸わかりなほどなのかもしれない。

(こんなにお慕いしているのに、私の想いは届かない)
 君枝の胸に、切ない感情がこみ上げてきた。

 貴子の手が君枝のお下げ髪を解き、手櫛でもって、からむ髪をほどいていく。

 以前の貴子なら、決してこんな風に人の面倒を見ることなどしなかった。
 ……貴子は変わった。
 それは、良い意味での変化。
 宮小路瑞穂と交友を結ぶようになってから、貴子は変わっていったのだ。

 周りを拒むようだった冷たい空気が……雪が解けるように暖かな春の日差しを思わせるようになったのは、いつからだろう。
 卒業を間近にして生徒会長という重責から解放された、というのもあるかもしれない。
 最近の貴子は、以前からは考えられないほど柔和に、そして優しくなっていた。

(……いまの会長なら、絶対、瑞穂お姉さまに独走されることなんてないのに)

 考えても意味のないことかもしれないけれど。
 いまエルダー・シスターの選出がされるのならば瑞穂の独走は無いと、君枝は自信を持って云える。
 瑞穂は、それはもう凄い人だけれど……いまの貴子なら、以前よりも多くの支持を得られるはずだった。

 時を戻せたらとか、過去に戻れたらとか。
 いままでそういったことをあまり考えたことはない君枝だったけれど、いまこのときだけは時間が止まって欲しいと願った。

 貴子の手によってお下げを解かれた君枝の髪は、軽くウェーブを描いている。
 対面している貴子の髪型に、それは酷似していた。

「そういえば……」
 貴子はなにかを思い出したかのような顔で呟き、その後に微笑んだ。
「……君枝さんと初めて会った時から、引っ詰め髪だったわね。お下げ以外の髪型、いままで見たことがなかったわ」

「会長は……──」
 いままで云いたくて我慢していたことが、喉元までせり上がってきた。
 ……このまま口に出さずに、お別れするつもりだったのに。
 いま、貴子が纏わせている優しい空気が、君枝の固い決意を揺るがせた。
「……初めてお会いしたときのこと、覚えて……いらっしゃい、ますか?」

「もちろんよ。私の友人が落とした生徒手帳をあなたが拾って、教室まで届けてくれたんだったわね。あれはそう……中等部の二年の頃だったかしら」

(覚えていて、くれたんだ……)
 ……貴子の、想い出を懐かしむような口調があんまりに優しくて。
 喉に切ないものがこみ上げてきて、君枝は涙ぐんでしまった。

 十条紫苑も、御門まりやも、そして厳島貴子も。
 高等部に入って急に有名になったわけではなく、小等部の頃からその名が人の口にのぼることが多かった。

 君枝は小等部の頃から貴子のことを一方的に知っていて、憧れの眼差しを向けていた。
 貴子は幼い頃から気むずかしい少女だったものの、時折見せる優しさが、その恩恵を受けられた者の心を捕らえて放さない。
 とはいえ、学年の違いによる見えない壁は小さい頃ほど厚く、君枝が貴子にお近づきになれる機会などまったくなかった。

 君枝が恵泉の中等部にエスカレーターで進学した時、すでに貴子は生徒会で活動していて、その名声は高まるばかりだった。

 ……そんなある日、君枝は中等部の下駄箱で生徒手帳を拾った。

 その手帳に納められていた生徒証に持ち主の顔写真が貼られていたのだけれど、それを見て持ち主が誰だかわかった。
 貴子と同じクラスで「受付嬢」をしている、ショートカットの女生徒だった。

 よほど親しい間柄でなければ、違うクラスの生徒が勝手に教室に入ってくるようなことはない。
 とはいえ、クラスが違う者同士が連絡を取り合う必要もあるわけで。
 そこで必要とされるのが、それを取り次ぐ役である「受付嬢」だった。
 別段、それは誰がやるのかと決めるようなことは無いものの、自ずと、そのクラスの取り次ぎ役をする人物は定まってくる。
 そういうわけで、その女生徒自身はそれほど有名ではないものの、君枝でもなんとなく顔を覚えるような機会があったのだった。
 なにより、その女生徒が貴子と会話している様子を何度も見たことがあったので、忘れられなかったというのもあるだろう。

 君枝は導かれるようにして、貴子とその女生徒のクラスに手帳を持って行った。
 受付嬢であるその女生徒は外出していて教室に居なかったものの、彼女と交友のある貴子が、代わりに君枝の相手をしてくれたのだった。

 正直、君枝はそのとき、貴子とどんな会話をしていたのか覚えていない。
 憧れていた貴子と対面し、ただひたすらに舞い上がっていた気がする。
 そんな君枝に、貴子は優しく笑いかけてくれていた。

 ……手帳を貴子に手渡し、名残惜しいものの教室を後にする。
 そんな君枝の背中に、貴子の声が聞こえた。

『……子さん、あなたが落とした手帳を、下級生が拾って持ってきてくれたわよ。まだ廊下にいると思うわ。あ、ほら……あのお下げ髪の可愛らしい下級生が──』

「……あの日の朝、私、寝癖が酷くて。それを誤魔化すために、たまたまお下げ髪にしていたんです」
「まあ……」
「会長に……貴子お姉さまに覚えていてもらいたくて、あの時から私、ずっとお下げ髪にしていたんです。つぎお会いしたときに思い出していただけないかなって……ずっと私……」

 あの日から、毎朝髪を編むことが君枝の日常となった。

 君枝が中等部二年になったのを気に勇気を出して生徒会の門戸を叩いたとき、すでに中等部での生徒会長となっていた貴子は、果たして君枝のことを思い出してくれた。
 そのときの感動は、君枝にとって忘れられない、大切な宝物で……。

 中等部で、貴子と君枝は生徒会業務に取り組む。
 一年経った後、貴子は先に高等部へと進学していった。
 ……そうしてもう一年経ち、君枝も高等部へ進んだ入学式の日、貴子は君枝を生徒会に招いたのだ。

『待っていたわよ、君枝さん。あなたがよければ、また一緒に生徒会で頑張りましょう』

 その言葉が、どれほど君枝を呪縛したのか、貴子にはきっとわからないだろう。
 それからの二年間、君枝にとって忙しいものの実りのある、充実した時間が過ぎていったのだ……。

「中等部の頃ならいざ知らず、いまなら、あなたがどんな髪型に変えたとしても絶対気づいてみせるわよ」
 そう優しく言葉を掛けながら、貴子は君枝の背後に回って、君枝の髪を弄る。
 君枝のゆるやかに波を描く長髪を梳きつつ、裾のほうを少しだけ編み込む。
 そうして、二本のお下げを縛っていたゴム紐で、その裾の編み込みを縛る。

 君枝と貴子が生徒会で一緒に活動するようになってから、三年の月日が経っていた。
 その間、引っ詰め髪で太い黒縁眼鏡を掛けた、地味な印象の強かった君枝が……。
 貴子の手で髪を解かれ、ゆるやかなウェーブヘアーを背中に流し、髪の裾を少しだけ編み込んだ髪型になると、ずいぶんと華やかな雰囲気をまとわせるようになった。

「君枝さんは眉がしっかりしているから、黒縁じゃなくて縁なしの眼鏡のほうがバランスが合って良さそうね」
 近くに置かれていた学ランを貴子は拾い上げ、君枝の肩に羽織らせる。
 そうして隠れた長髪を、貴子の白い手が持ち上げ、ふたたび君枝の背中に流した。

「あなたと毎日のように生徒会で会うようになってから、もう三年。長いようで、短かったわね……」
 そんな風に感傷に浸っているからか、いままでの貴子なら決して他人にはしないようなことをしたのだろうか。

 その甘い優しさにほだされ、君枝は、やはり我慢していたことを口にしてしまおうとする。
 それを口にしてしまえば貴子に嫌われてしまうかもしれない、と思いつつも。

「会長は……」
 言い出して、グッと云い止まる。
 慌てて周りを見回すが、気を回したのか別の用事が出来たのか、葉子と可奈子は居なくなっていた。

「なにかしら?」
 貴子の問いかけが最後の一押しとなり、君枝は心に溜めていた苦しみを吐き出す。

「会長は、どうして葉子さんを生徒会長に選んだのですか……? どうして、私ではダメだったんでしょうか……」

 ……云ってしまった。
 生意気だと、自分の決定に意義があるのかと、貴子は不快げに眉を顰めるだろうか。
 いまの空気に甘えて、口に出してしまったことは僭越だっただろうか……。

 貴子の顔を見るのが怖くて、君枝は背を向けたまま、自分の言葉を連ねていく。

「私、小さな頃からずっと会長に……貴子さまに憧れてました……! だから……貴子お姉さまが居なくなってしまう来年度は、私がその後を継げないかと思って……思っていたからっ……!!」

 自分は、葉子よりも長い時間、貴子と一緒にいた。
 中等部の二年と、高等部の一、二年。
 生徒会業務だって、貴子は葉子よりも自分にいろいろ頼ってくれていた。
 誰よりも、貴子からの信頼を得ていると感じていた。
 ……けれど最後に、貴子が後継者に選んだのは葉子だった。

 憧れの人の、後を継ぎたい。
 真摯に願っていた想いを、その人自身に否定されてしまったように感じて。
 自分勝手な思いでしかなく、本当は、自分よりも葉子のことを信頼していたのだと示されたようで……。

 だから、君枝はとても悲しかった。
 俯いたまま、静かに涙を流す。
 ポタポタと、体育館の床に涙の滴がこぼれ落ちた。

「……莫迦ね」
 貴子の、声。
 ビクリと震える君枝を、貴子は正面に回り、そっと抱き締めてきた。

「そう、莫迦だわ。自分の愚かさに、いまさらながら頭に来る」
 君枝の頭の上から、貴子の優しい声が下りてくる。
「あなたは私に似ているから。ううん、似すぎているから。口に出さなくてもわかってくれるって、勝手に思っていた」

 硬直している君枝を、貴子は優しく抱き締め続ける。
 そうして、回した腕で君枝の肩をそっと叩きながら言葉を紡いでいく。

「でもそんなのは、自分勝手だったのよね。思いは、口に出さなければなかなか人には伝わらないもの。……君枝さん、あなたは、私に似すぎているのよ。あんまりに似すぎているから、私と同じようにならないようにと思って……だから、生徒会長には選ばなかったの」
 その言葉を聞いて、君枝は顔をあげる。
 至近で見つめ合うことになったが、恥ずかしさよりも、貴子の言葉を聞き逃さないように集中する。
「生徒会長という職は、あんまりに重いもの。七百を超える生徒たちを取り仕切るのだから、当然よね。それは、私や君枝さんのような真面目過ぎる者には、耐え難いほどの重圧なの。それに負けじと頑張るあまり、私、意固地になりすぎていろんな人たちから嫌われてしまったわ」

 自嘲するように云う貴子の顔は、とても寂しげだった。

「あなたは私と似ているから、同じ轍を踏ませたくない。私自身もそうなのだけれど、本当はメインになるよりも誰かを補佐する役が合っているのかも知れないわね」

 ちょっと笑った後、貴子は真剣な表情になって、君枝の頬を両手で抑え、のぞき込むように見つめてきた。

「君枝さん。あなたが私の後を継ぎたいと思ってくれることは、とても嬉しいわ。けど、あなたが本当に、私の『夢』を継ぎたいと云うのなら……」

 そこで言葉を切り、貴子は君枝の瞳をじっと見つめてくる。
 それは息苦しいほどの沈黙だった。
 実際に息を止め、君枝は貴子のつぎの言葉を待つ。

 ……そうして、ようやく貴子から紡がれた言葉は、君枝の想像の域を超えていた。

「私の夢を継ぎたいと云うのなら、エルダー・シスターにおなりなさい」
「………っ!?」
「私もあなたと同じで、憧れている人の後を継ぎたかった。エルダーに選ばれたものの病気の所為でまっとうできなかったあの人の夢を、継いでみたかった」

 ……十条、紫苑。
 君枝の脳裏に、あの黒髪の美女の姿が浮かんで、消えた。

「でも私は、エルダーになれなかった。当然だわ。同じ学年に競争相手も居ないとタカをくくり、転入生なんかに負けるわけないとちっぽけなプライドにしがみついて何もせず、いままでの名声と、生徒会長ならば棚ぼたで選ばれるだろうだなんて安穏と構えていたのだから」
 そう自嘲するように云った後、貴子はもう一度、君枝に告げる。
「だから……私の意志を継ぎたいというのなら、エルダー・シスターにおなりなさい」

 魅入られたように貴子を見つめていた君枝だったが、その言葉が浸透するにつけ、身体がぶるぶると震えだした。

「む、無理ですっ……。私なんかが、エルダー、だなんて……」
「お姉さまは……瑞穂さんは、編入してからたった一月でエルダーに選ばれたのよ。瑞穂さんは、それはもう凄い人だけれど……だからといって、似たようなことを誰にも出来ないとは云えないわ」
「で、でも……そんな……」
「あなたは瑞穂さんよりも有利なのよ。副会長だし、幼等部の頃から恵泉に通って友人知人も多いし、なによりも同じ学年に競争相手は居ない」
「けど、私みたいな地味な子じゃ……」
「あなたはまだ、磨かれる前の原石よ。いまの姿を、あなた自身に見せてあげたいわ。髪型を変えただけで、あなたの印象はとても鮮やかになっているもの」

 貴子は、冗談でもその場しのぎの褒め言葉でもなく、いたって真剣に云っているようだった。
 そんな君枝の考えを見抜いたように、貴子は頷く。

「私の言葉を信じなさい。あなたが真剣に取り組むならば、きっとエルダー・シスターになることは不可能ではないはずよ」
「……貴子……お姉、さま……」
「あなたが私の意志を……夢を継いでエルダーになってくれたなら、私はきっと、自分のことのように嬉しいわ」

 そう云って貴子は、眩しいぐらいの微笑みを浮かべた。
 それを受けて君枝は、涙を拭うこともないまま、泣き笑いのような顔でコクリと力強く頷いた……。



 ……その年の七月。
 二回の投票と、生徒会長・門倉葉子からの得票譲渡を経て、菅原君枝は第七十三代エルダー・シスターとなる……──。



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