(とても幸せだった…
それが日常であることを俺は、ときどき忘れてしまうほどだった。
そして、ふと感謝する。
ありがとう、と。
こんな幸せな日常に。
降り積もった雪の上を駆けぬけ、その跳ねた雪がズボンのすそに付くことだって、それは幸せの小さなかけらだった。
永遠に続くと思ってた。
ずっと俺は雪の上を跳ね回っていられると思ってた。
幸せのかけらを集めていられるのだと思ってた。
でも壊れるのは一瞬だった。
永遠なんて、なかったんだ。
知らなかった。
そんな、悲しいことを俺は知らなかった。
知らなかったんだ…。
「えいえんはあるよ」
彼女は言った。
「ここにあるよ」
確かに、彼女はそう言った。
永遠のある場所。
…そこにいま、俺は立とうとしていた)
◇