祐一 「…あっと…。ちょっと、待っててくれな」

栞 「……?」

栞の頭の上…ベッドの枕元を、俺はごそごそと探る。
そうして、そこに隠してあった小さな包みを、つまみ上げた。

栞 「祐一さん、それは?」
祐一 「…コンドーさんだ」

栞 「……」

栞の眼差しに非難の色がうかがえて、なんだかとても、居心地を悪くさせる。

祐一 「これ、付けなきゃな」
栞 「…祐一さん…最初から、そのつもりでいたんですね」

なんだか責めるような口振り。

祐一 「い、いや、そんなことはないぞ、うむ」
栞 「…なんだか、慣れている感じで、嫌です」
祐一 「ば、馬鹿もーんっ。コレを枕元に忍ばせておくなんて、男の常識だぞ」

いや、普段は置いちゃいないけど。

いつも置いてたら、秋子さんにばれて、どんな目で見られてしまうやら。
でも秋子さんのことだから、素知らぬふりをしてくれるだろうけど。

…やる気まんまんだったのを指摘されると、やっぱりちょっと…恥ずかしい。

封を切ろうとする俺の手を、栞がつかんで止めた。

栞 「祐一さん、大丈夫です」
祐一 「へ?」
栞 「あの…今日はそれ、無くても大丈夫な日なんです」

あ、あれか…。
いわゆる、安全日ってヤツなのか?

祐一 「そ、そっか。じゃあ、つけなくても平気なんだな」
栞 「…はい」

祐一 「ふうん…。その、いわゆる、安全日ってヤツ? すぐにわかるもんなのか?」

栞 「毎朝、検温とかしていますから」
栞 「生理の関係で、計算もしてますし。今日は私、大丈夫です」

祐一 「計算って…なんか、慣れてる感じで嫌だぞ、栞」
栞 「わーっ。そんなの、女の子の常識ですっ!」

…ふたりで顔を見合わせて笑った。
妙に和んでしまうのもまずいので、勢いよく栞を押し倒す。

間近で視線を絡めたまま、囁きかける。

祐一 「それじゃあ、入れるぞ、栞…」
栞 「…はい」

祐一 「生でそのまま…入れちゃうぞ?」
栞 「…はい。祐一さんの、そのまま…どうぞ」

頬を火照らせた栞が、くすりと笑った。

ベッドの上で、身を投げ出すような格好で、クテンと寝転がる栞。

いざ俺が入れようとすると、さきほどまで柔らかかった栞の身体が、少し強張ってしまった。

祐一 「力、抜いて…」
栞 「は、はい」

祐一 「大丈夫、前みたいに、痛くないから」
栞 「ほ、ほんとですか…?」

…多分、だけど。

初めてのときの栞の様子が思い出され、俺は慎重になる。
栞の呼吸に合わせるように、ゆっくり…ゆっくりと、栞の中に自分のものを埋めていく。

栞 「…あっ…ううっ…はぁあ…んくっ…」

身体から絞り出されるような吐息。

以前よりは、確かにスムーズに入れることができそうだけど、それでもやはり、きつい。
ゆっくりと押し入っていきながら、栞の顔を見つめると、その様子がうかがえる。

…やはりまだ痛いのか、顔が泣きそうに歪んでいた。

祐一 「痛いか…?」
栞 「は…い…少し…でも…」
祐一 「…でも?」

栞が苦しげに閉じていた瞳を、うっすらと開ける。

栞 「痛いけど…ちょっとムズムズして…」
栞 「…んんっ…」

祐一 「…ムズムズして?」
栞 「き、気持ちいい…かも、です」
祐一 「…そうか」

栞の、控え目な表現。
いつもの、茶目っ気のあるような、こまっしゃくれた様子がない。

そんな余裕もないのだろう。
栞は、ベッドの上では雨に濡れた子犬のように従順だった。

栞 「…あっ…ああっ…!」

俺のものを、栞の中に全て埋め込んだ。

ふたりの下腹部がピッタリと密着する。
ひとつになった…というのを強く実感する。

俺はその満足感に深い溜め息をついた。

まるで足りないものを手に入れたような…そんな、満たされた思い。
いままで拒まれ続けて、ようやっと今日、再びひとつになることが出来て、嬉しかった。

…しばらく動かないで、栞の上に覆い被さったままでいる。
そうして、真下にある栞の顔に、キスをしていく。

唇、顎、鼻、頬、瞼、額、耳、髪、そして首。

栞の顔すべてに、出来うる限りのキスの雨を、降らす。

身体を密着させたまま、栞にキスの雨を降らすのが、なんだかとても、気に入った。
それはまるで、俺がどれだけ栞を愛しているかを示せるようで。

俺は両手で上半身を起こし、栞と繋がっている腰を、ゆるやかに泳がせはじめた。
あまり前後には動かさずに、下腹部を密着させ、こすり合わせるように、ゆらゆらと泳がせる。

栞の反応を確かめながら、静かに、ゆっくりと。

…栞を初めて抱いたのは、もう何ヶ月も前だ。

だから、あのときのことははっきりとは覚えていない。
しかし以前のときと比べて、いまの栞は明らかに反応が違った。

それは2回目だからだろうか。
それとも、実際にこうして結ばれる前に施した愛撫が、栞の身体に火を灯したからだろうか。

栞が喘ぐように漏らす吐息。

その熱い吐息には、痛みも感じられたけれど。
抑えようとしているが、心地良さげな甘い響きも感じられた。

…愛おしい栞。

そんな栞に、痛みと快楽に満ちた吐息を漏らさせる自分。
それができるのは、俺だけなんだと思うと、妙に感動した。

こんなに愛おしい栞を、独占しているという優越感。
いまは痩せ細っているけれど、これから綺麗に成長していく栞を、自分が導いていけるという満足感。

…はじめてのときは、俺にも余裕がなかったけれど。
今回は、最初に栞が口でしてくれたので、ずいぶん余裕があった。

泳がせるように動かしていた腰の動きを、前後への動きに切り替えていく。

ゆっくりと、慎重に…決して、自分だけの欲望に走らずに。
栞をゆったりと導くように、じわじわ…と。

栞の反応を第一に、腰の動きを定める。

明らかに、栞が甘やかな反応を見せる時がある。
それを見逃さず、同じ動きを再現すると、やはり栞の反応は同じものになった。

…かといって同じことばかり繰り返さないで、違う動きも確かめてみる。
そうしてまた、栞から喜びを引き出せる場所を見つけ出す。

そうやって少しずつ、しかし多くのことを学んでいった。

栞という愛おしい楽器を見つけ出し、それを掻き鳴らす快楽に酔う楽士のように…。
…だなんて、ちょっと美化し過ぎか。

栞 「…はぁ…あぁ…はぁ…はぁ…んぅ…」

栞の身体は汗ばみ、すでにピンク色に上気し、なまめかしい色合いを見せていた。
俺の肌にピッタリと吸い付いてくる感じが、とても淫らだった。

…会話さえも忘れて、俺たちは貪るように快楽を求めた。

栞は、自分に襲いかかる快楽に堪え忍ぶように、唇を結んでいる。

栞 「…ん、んんっ…はぁ…あ、あぁっ…ん…んく…んんんんぅ…」

その唇の間から、断続的に漏らされる吐息が、熱く、甘やかだ。

ふと、言葉で訊ねてみた。

祐一 「…栞、気持ちいいか…?」

そんなこと訊ねなくてもわかっているのに、敢えて言葉にして聞いてみる。
俺の言葉に気づいたのか、快楽に夢中になっていた栞が、気怠そうにまぶたを開ける。

栞 「…えっ…? あ、はいっ…?」

まるで夢から覚めたような表情。

祐一 「栞、気持ちいい?」

栞の耳元に、そっと囁く。

栞 「あっ…!!」

カァ…っと、見ていてわかるほど、栞の顔が耳まで即座に紅潮した。
目の前の快楽に言葉もなく没頭していた自分に気づき、赤面したのだろう。

栞 「あっ…うっ…」

どもったように、喘ぐ栞。
栞の細い身体に、羞恥のためか汗が一気に吹き上がった。

祐一 「栞、言葉にして…」

祐一 「喋ってくれないと、わからないぞ?」

意地悪している…と自覚するものの。
それに対する栞の反応があまりに可愛らしくて、ついつい苛めてしまう。

…く、癖になりそうだ。

ちなみに、話をしている間も、腰の動きは止めない。

栞 「…は…はい…そのう…そのぅ…」
栞 「…はぁっ! …き…気持ちいい…です」

視線を逸らしながら、恥ずかしげに言葉を紡ぐ栞。

…ああ、なんて可愛いんだ。
ど、どうしてくれよう…。

胸に荒ぶるような激しい情欲が生まれ、それが下半身にある俺のものに伝わっていく。
自分の感情を示すように、栞の中に、男のそれを突き入れていく。

快感が強くなっていくと、強い刺激も甘やかなものに変わっていく。
最初はゆっくりと静かにしていたけれど、栞の反応を見つつ、少しずつ強めていった。

祐一 「なあ、栞…。もっと声、聞かせて…?」

栞 「え?」
栞 「…あっ! …はぅ…はぁ…、こ…声…って?」

祐一 「そう…そんな感じの、栞の、可愛い…声」
栞 「……っ!」

栞が眉を寄せて、恥ずかしそうに瞳と口を閉じる。

祐一 「唇を閉じないでくれ…栞が感じたままの声を、出して欲しい」
栞 「ゆ…祐一…さん、はっ…エッチ…ですっ!」

栞が思い出したように抗議してくる。
普段の茶目っ気が感じられて、嬉しくなる。

…しかしその間も、腰の動きはゆるめない。

栞 「…そ、そんなこと言う人…」
祐一 「…嫌い、か?」

栞 「あっ…?」

栞のお馴染みの言葉を耳にした途端、ピタリと、動かしていた腰を止める。

ギシギシと音を立てていたベッドの音が、止む。
俺たちふたりが漏らす荒い吐息のみが、この部屋を満たす。

祐一 「…嫌いか、栞?」

俺の下でぐったりと横たわる栞に、囁きかける。

栞 「……」

栞が切ない表情を浮かべて、潤んだ瞳で見つめてくる。
…止めないで、と目が語っていた。

だけど俺は、動きを止めたまま、問う。

祐一 「…栞?」

俺の問いかけに、栞がキュウッと瞳を閉じて、喘ぐように言葉をこぼした。

栞 「嫌いじゃない…です」
祐一 「…うん、よし」

栞の答えを聞いて、また、腰の動きを再開した。
今度は、さらに強く。

栞 「ゆ、祐一さんっ、祐一さぁんっ!」

栞 「はぁ…あぅっ…嫌い…」
栞 「…意地悪な…祐一さん…嫌い嫌い…あぁっ…!」

祐一 「…もっと声、聞かせて…」
栞 「…はっ…はいっ…」

祐一 「栞の声、聞けると安心するから」
祐一 「感じてるの、わかるから。声、出して。…な?」

栞 「…はい…はいっ…あぁっ…は、はいっ…!」

こくこくと、慌ただしく頷く。

栞の甘い声が、俺の動きに引き出されて、部屋に満ちていく。
その声を浴びながら、栞の中に快楽を刻み込んでいく。

…そうして俺も、その中に酔っていった。

ふと気づくと、俺の腰の横で、栞の両足がふらふらと泳いでいた。

足の指をキュッと曲げて、快感に耐えているようだ。
そうして、俺が腰を動かす度に、心許なげにゆらゆらと宙をさまよう。

祐一 「…足、辛いだろ? 俺の腰にまわしていいから」

俺の言葉に従って、栞の両足が俺の腰にすっと絡んできた。
すると、栞の太股の角度が変わり、互いの結合が深まった。

それと気づいてか、それとも無意識でなのか。
栞は俺の腰にまわした足で、ぐいぐいと俺の身体を引き寄せようとしてきた。

栞 「…あっ…」

目をつむって喘いでいた栞が、まぶたをうっすらと開けて、なにやら苦しげな様子で言葉を紡いだ。

栞 「…や、やだっ…」
祐一 「……?」

栞 「や…やだやだ…やだっ…」
祐一 「栞、なにが嫌なんだ…?」

苦しい…というよりも、ひどく色っぽい表情で、栞が俺のことを見つめてきた。
かと思ったら、ぷいっと顔を逸らしてしまう。

祐一 「栞…?」
栞 「…うぅ…ふぅうう…うそ…やだ…は、恥ずか…ああぁっ!」
祐一 「栞、なにが恥ずかしいんだ?」

栞はベッドに後頭部を沈めたまま、左右にイヤイヤと首を振る。

真っ赤に火照った顔。
辛そうな…けど、快楽に彩られた表情。

栞の細い身体全体が、いまやじっとりと汗ばみ、紅潮していた。
栞の吐息が、さらに激しく短くなる。

…ふと思いついて、訊ねてみた。

祐一 「…もしかして…イキそう?」
栞 「……っ!?」

俺が問い掛けると、栞が切なげに身体を震わせた。

そうして、熱っぽい瞳で俺を見つめてきた。
本人にその気はないのかもしれないけど、その目つきはひどく淫らで、俺を誘い込むようだった。

…そして栞は、恥ずかしげにコクリ…と頷いた。

祐一 「そうか…」

俺は嬉しさに胸がいっぱいになりながら、栞への抽送を早めていく。

祐一 「嬉しいぞ、栞…」
栞 「…はい…あああっ…はいっ…」

祐一 「大好きな栞が、こんなにも気持ちよく…なってくれてる…なんて」
栞 「ああっ! はぁっ! んんんんっ!」

祐一 「俺も、すぐ、追うから。無理しないで…な?」

栞が俺の首根っこに腕を回し、ぎゅうっと抱きついてきた。
動きにくくなってしまったものの、栞の好きなようにさせた。

それにこうやって密着して動くと、栞の胸や、いちばん敏感な部分も刺激するようになる。

ベッドの中で、俺にすがりついてくる栞に何度も何度も、突き入れていく。

栞 「…祐一、さんっ…!」
栞 「名前、呼んで、くださいっ…! 名前…たくさん…呼んで…」
祐一 「わかったよ、栞」

栞の言葉に応じて、俺は栞の耳に名前を吹き込んでいく。
自分の呼吸に合わせて、何度も。

栞 「…祐一さ、ん…祐一さぁんっ…!」

俺に力一杯しがみついてくる栞。
俺の顔の横で、可愛く喘ぎながら、俺の名前を連呼する。

栞 「…あっ…ああ…あああ…ああぁああっ…!!」

…やがて、栞が一際高く、啼いた。
栞の細い手足が、俺に震えながらすがりついてくる。

その途端、栞と繋がっている部分が、いままで以上の強さで締めつけてきた。
そうして、そこ全体が小刻みに震えた。

栞の可愛い泣き声と、俺のものに突然襲ってきた衝撃。
我慢していた俺も、それには抗えきれず、一気に限界を越えてしまった。

しがみついてくる栞の中に、そのまま、自分のそれを吐き出した。

音まで聞こえそうな勢いで、栞の奥に注ぎ込んでいく。

…ああ…。

世界が真っ白になるぐらいの、快楽。
呼吸さえも忘れて、その快楽に酔いしれる。

俺の全てを飲み込もうとするかのように、栞の中が脈動し、俺を刺激してくる。
俺もそれに応じるように、ゆるやかに行き来して、出しうる限りの全てを、栞の中に出し尽くした。



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